ラッピングカー施策の効果を高める心理テクニックとは?
ラッピングカーとは、自動車に特殊なフィルムを貼ることで車体のデザインを変えた車のことです。一般に塗装よりも費用が安く、デザインの自由度も高い上に、貼ったフィルムは剥がすこともできるので、趣味だけでなく広告としても人気の施策のひとつ。今回は施策の効果を高める心理テクニックについてご紹介します。
バンドワゴン効果
バンドワゴン効果(bandwagon-effect)とは、アメリカの経済学者が創作した言葉です。何かを消費したり投資したりするときに、自分の信念とは関係なく、ほかの人がみんなそれをしているように見えるためにつられて行動してしまうことを指します。
自分の信念や行動をグループのものに合わせようとするこの傾向は「群れの精神」とも呼ばれ、生物学的にプログラムされているのです。人は心理的に社会的に多数派の一部になると安心感を得るため、多くの支持を得ているように見える人や物を支持しようとします。同じものを支持する人が多ければ多いほど、支持する人はどんどん増えていくのです。
また、繰り返し同じ情報に接することで同様の効果が上がることもあります。ファッションのトレンドが変わったときに、最初は違和感があっても次第に見慣れて違和感がなくなっていくという体験はないでしょうか。
雑誌やWeb上で何度も同じトレンドを見ることで好感度が上がり、さらに周りも同じファッションをすることで自分も合わせたファッションをするようになります。トレンドに注目することは、ある意味、情報収集にかかる時間を節約するコスパのよい方法ともいえるでしょう。
こうしたバンドワゴン効果を利用するものとしては、たとえば「全米が泣いた映画」「支持率No.1」「95%以上がリピート」といったキャッチコピーがよく見られます。こうしたコピーをラッピングカーのデザインに用いることで、人気や商品のよさをアピールすることができるのです。
シャルパンティエ効果
シャルパンティエ効果(Charpentier effect)とは、「サイズと重さの錯覚」とも呼ばれ、商品や広告のキャッチコピーとしても活用されています。たとえば、大きさの違う同じ重さのボールをもたせると、多くの人が大きなボールのほうが軽く、小さいほうが重く感じます。
これは脳がイメージをもとに判断をしているために起こる錯覚です。シャルパンティエ効果を用いると、人がイメージしやすい表現をすることでインパクトやお得感をより強く与えることができます。たとえば「二日酔いに効くオルニチンが〇mg」といわれるよりも、「シジミ1,000個分」と具体的にたとえていわれたほうがイメージしやすくインパクトがあります。
逆に、「年会費30,000円のジム」ではためらってしまいますが、「1日たったの80円で年中通い放題」といわれたほうが、お得に感じます。そのほか、1gを1,000mgと表現してたくさん入っているように感じさせたり、広い場所を東京ドーム〇個分と表現してとても広いイメージを与えたりする表現も。実際の量や金額は変わらないのに、表現によって与える印象を操作することができるのです。
ハロー効果
ハロー効果(halo effect)は、光背効果やハローエラーとも呼ばれます。ここでいうハローはあいさつではなく、聖人の頭上にある光の輪のことで後光や光背のことです。ハロー効果は、何かを評価するときに、目立つ一部の特徴によって全体の評価がよくも悪くも引きずられることを指します。
たとえば、有名大学を卒業していたり社交的で清潔感のある見た目であったりすると優秀と評価されたり、逆に身なりが整っていなかったり中途入社であったりすると評価が悪くなったりするのです。もしお店に行って、笑顔でハキハキ答える店員さんと、対応がいまいちな店員さんがボソボソした声で商品を紹介していたら、笑顔の店員さんがすすめる商品の方がよい商品に見えます。これがハロー効果です。
商品やサービスをよいものに見せたいときに、「医師が本気で勧める」「ランキング1位」「〇〇賞を受賞!」といった権威を利用したキャッチコピーを使うことでよいイメージを与えることができます。芸能人やアスリートをイメージキャラクターに使うのも、ハロー効果を利用しているのです。
ストループ効果
ストループ効果(Stroop effect)とは、ふたつの情報が同時に与えられたときに、情報がお互いに矛盾していると判断が難しくなってしまう現象のことです。たとえば、「文字が何色で書かれているか答えてください」という問いを出し、「赤」という文字が「青色」で書かれていると、「赤」が「赤色」で書かれている時よりも判断に時間がかかってしまいます。
文字の意味と色、というふたつの情報が矛盾しているため、理解が難しくなるためです。道路標識では「赤=止まれ」ですが、もし青色で止まれと書かれていたら、見る人は混乱してしまいます。真顔でありがとうといわれても素直に受け取れません。
広告は、見る人が直感的に理解しやすいように気を付けなければならないのです。つまりストループ効果が起きないような配慮が必要ということ。「売れています」という言葉がほっそりした書体で書かれていたら、自信がなさそうで売れている印象は与えられません。文字の色や書体、コピーと画像が合っているかなど、矛盾しないラッピングデザインを心がけましょう。
初頭効果
初頭効果(primacy effect)とは、一番初めに受けた印象が、対象にもつイメージとしてもっとも記憶に残りやすく定着しやすいという心理効果のことです。第一印象は出会って数秒の間で決まるといわれており、このたった数秒のイメージが、その後の判断に影響します。
近年広まっている動画広告でも、最初の数秒で興味を引き商品を印象づけられた広告が、結果として売上などの効果を出しているのです。最初の5秒でよく分からなかった広告はスルーされてしまいます。ラッピングカーのデザインをする際にも、まずパっと見た瞬間に何の広告か分かる画像やキャッチコピーを用いることが必要です。商品やサービスの売りが最初に目に入るようにしてよい印象を与え、興味をもってもらいましょう。また色の使い方も重要です。色にはそれぞれ人に与える印象が異なります。
たとえば赤はエネルギッシュで前向きな色、緑は自然を連想させる落ち着きと癒しの色、青は爽やかさや知的なイメージ、黄色は明るく元気な色で視覚にも残りやすい色です。紫は高貴さや優雅さ、黒は重厚さや高級感、グレーは上品でスマートな印象。お得な情報は黄色や赤とメリハリのつく黒色を使った広告が多く、有名企業やブランドでもそれぞれのイメージカラーをもっています。
LINEの緑色や楽天の赤いロゴ、Twitterの青色など、ひと目でその企業であることが分かるでしょう。あまり多くの色数を使うとごちゃごちゃした印象になってしまうため、色数はしぼり、商品やサービスにどんな印象をもってもらいたいか、ターゲットの目に留まる色はどんな色かを考えて色使いを決めることをおすすめします。
まとめ
今回は、ラッピングカーを広告施策として使う場合にその効果を高める心理テクニックについてご紹介しました。同じくラッピングカーを制作するにしても、心理テクニックを知っているのと知らないのとでは大きな効果の違いが表れます。ひとつひとつの効果の名前は知らなくとも、効果を利用したキャッチコピーを聞くと耳慣れたものも多いはずです。
商品やサービスの売りとしたいポイントは何か、そのよさを伝えるために効果的な色やキャッチコピーはどんなものかよく分析する必要があります。同業者や有名ブランドの公告を、今回ご紹介した心理テクニックの面から見ると、売れる広告のコツが分かってきたでしょう。テクニックを上手に使って、効果が上がるワンランク上のラッピングカーを実現してください。