痛車は道路交通法上問題ないの?痛車に乗る前に知っておこう!
車体に好きなアニメやゲームのキャラクターなどが描かれた痛車。周囲からみて「痛い」「恥ずかしい車」ということから痛車と呼ばれていますが、アニメの世界観を車の外装で表現することに魅了されている人も多くいます。そんな痛車に乗りたいと思ったときに気になるのが法律の問題。今回は痛車に関する知っておきたい法律上の問題を紹介します。
道路交通法では痛車は問題ない
アニメ大国と呼ばれるだけあり、アニメキャラクターやゲームキャラクターを外装に飾り公道を走る痛車を見かけることも珍しくなくなりました。しかし、公道を走る痛車を見つけた際に、一般車にアニメキャラやゲームキャラをつけてカスタマイズした車が公道を走っても問題ないのか、疑問に思う人も多くいるのではないでしょうか。
現在、日本の公道を走る車は、国土交通省が定める「道路運送車両の保安基準」に定められたルールを順守することが義務付けられており、それに反するような改造をしている車が公道を走ることは法律違反となります。
逆にいえば、それらの保安基準を順守していれば痛車が公道を走ることは道路交通法上、何も問題はありません。では、痛車に貼られるステッカーなどの貼り付けに関係してくる保安基準にはどのようなものがあるのでしょうか。
ステッカーの貼り付けに関する保安基準とは?
痛車に貼るステッカーなどフィルム類の貼り付けについて道路交通法では、道路運送車両の保安基準の第29条と道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(第三節)第195条に詳細が記載されています。それらの保安基準によると、フロントガラスと運転席、助手席の側面ガラスへは定められたもの(整備命令標章、臨時検査合格標章、検査標章、保安基準適合標章、保険標章や共済標章など)以外を貼りつけることが禁止されています。
フロントガラスや運転席及び助手席の側面ガラスは、運転の妨げになることから交通事故の原因にもなりかねないため、アニメやゲームのキャラクターなどにかかわらず規定のもの以外は貼り付けることはできません。また、道路運送社労の保安基準の細目を定める告示(第三節)第195条により、運転席の視界が悪くなり事ゆえにつながる恐れがあることから、フロントガラスや運転席、助手席の窓ガラスには可視光線透過率が70%未満となる着色フィルムなどの貼り付けも禁止されています。
そのため、痛車のデザインに合わせて窓にフィルムを貼る際には透過性へも注意が必要です。それ以外のボディや後部座席の窓に関しては、運転席からの視野を妨げることがない位置であればアニメキャラクターなどのステッカー類を貼ることは可能であり、道路交通法違反で罰せられることはありません。
著作権的には違法である可能性
痛車で公道を走行するにあたり、道交法以外にも気をつけなければならないのが著作権です。痛車に貼るステッカーに描かれているアニメやゲームのキャラクターは、アニメ作者や制作会社に著作権があります。痛車で公道を走行することで責任を問われるケースは多くはありませんが、痛車の制作業者が著作権侵害で摘発される事例は存在しており、痛車を制作する場合には著作権を侵害することがないように注意しなければなりません。
著作権は民事上の請求となるため、著作権の侵害に対して著作権利者が告訴することで侵害者を処罰でき、懲役や罰金などが定められています。私的利用にとどまる「私的使用のための複製」であれば合法となることから、痛車は個人で楽しむものという認識のもとステッカーを制作してしまう人もいます。
しかし、痛車の場合は公道を走るため第三者の目にさらされるので、著作権法違反として訴えられてしまう可能性も充分にある点はしっかりと理解しておかなければなりません。しかし、著作権と聞くと難しいイメージを持ち、実際にどのような点に注意すればよいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。ここからは、痛車を作る際にどのような行為が著作権侵害となるのか具体的にみていましょう。
著作権侵害になる行為とは?
痛車を制作するにあたり、どのような行為が著作権侵害となるのか判断する際には、痛車を制作するまでに行う作業ごとに検討するとわかりやすくなります。
具体的には、著作権が発生するキャラクターやロゴなどを使用した痛車を制作する際のステッカーを作成する行為、ステッカーを自動車に貼る行為、ステッカーを貼った自動車で公道を走る行為の3つに分けて検討しましょう。
これらのなかで著作権侵害となるのは、著作物のステッカーを作成する行為となります。著作権者の許諾なく販売されているイラストなどをスキャンしてステッカーを制作する行為だけでなく、ステッカーを作成する際にイラストの改変などを加えることも著作権侵害となるので注意しましょう。
また、ステッカーを車の外装に貼る行為やステッカーを貼った車で公道を走る行為に関しては、意外にも著作権侵害にはなりません。そのため、著作権を侵害することなく痛車を制作するためには、ステッカーを制作する際に著作権侵害がないか注意をすることが大切です。
ステッカーを制作して痛車に貼ることが著作権侵害にならないか調べるためには、著作権者が出しているガイドラインを調べる必要があります。著作権者により制定されたキャラクターやロゴの使用に関するガイドイドラインがホームページで掲載されていることがあるので、まずはホームページなどから情報収集を行い確認するとよいでしょう。制作会社によっては、ステッカーの制作を業者へ依頼することを許諾している場合や、痛車についてのガイドラインを出している場合もあります。
キャラクターデータを利用した痛車の車両登録や痛車への著作権表記、運転免許証などの身分証明証の提出、痛車完成後にアニメ制作会社やゲーム制作会社へ完成画像の写真やデータを送付するとともに、ウェブサイトへの公開に同意するなどの条件を満たす場合にのみキャラクターの使用を許諾するケースもあるなど、著作権者により使用条件はさまざまです。痛車の制作をする際には、アニメやゲームの制作委員会など著作権者が痛車へのキャラクター使用を許諾しているか、ホームページなどから事前に調べておくようにしましょう。
事故にあった場合の補償
車を運転する上で欠かせない自動車保険ですが、痛車の場合は自動車保険でどのように扱かわれるのか気になる人も多いのではないでしょうか。自動車保険はカスタマイズの有無に関係なく「自動車検査証(車検証)」があれば基本的に加入可能となるケースが多いとされています。
車両が不正改造されている場合は車検には通らず、整備不良車両として扱われるため自動車保険の補償も対象外となります。不正改造と聞くとマフラーの取り外しなど構造的な面を思い浮かべる人も多いですが、痛車によくあるステッカーやラッピングについても、貼り付け部位によっては不正改造にあたる場合があるので注意が必要です。
ここで注意したいのが、法律に遵守して合法的にカスタマイズした痛車でも、自動車保険の補償対象外となる場合もあるという点です。たとえば、自動車保険では車の付属品も補償対象となる場合が多くありますが、ステッカーやラッピングは付属品とはみなされず、事故でステッカーに傷がついても修復費用を自動車保険で賄うことは難しいとされています。自動車保険によっては装飾部分を保障できる商品もあるため、事前に代理店や保険会社に相談してみましょう。
まとめ
自分の好きなアニメやゲームの世界観を車で表現できることが魅力の痛車ですが、痛車という目立つ形で表現するからこそ法律に遵守して楽しむことが重要です。これから痛車の制作を検討していく人はもちろん、既に痛車を持っている人も改めて法律的に問題がないか確認して痛車を楽しみましょう。