カーラッピングが劣化しやすくなる原因はある?
自動車の外装が傷ついたり色褪せたりしたとき、新品のように綺麗に見せることができるのがカーラッピングです。でも、当然のことながらそのラッピングフィルムはいつか劣化してしまいます。どのような状態になると劣化しやすくなるのか、ここではそれについて紹介していきましょう。
所有者自らがラッピング作業するときの注意点
カーラッピングは専門業者に委託しておこなうのが一般的ですが、ラッピングフィルムと道具さえあれば意外と誰でもラッピングすることができます。そのため、まずカーラッピングの劣化について、初心者でラッピングするときにやってしまいがちな失敗を紹介していきます。
一番多い失敗は、ラッピングの端でそこをしっかりと貼り付けてないと捲れ上がってしまってどんどんと剥がれてしまうのです。その状況を防ぐためには、外装の折り返し部分までしっかりとフィルムを張り付けておくことが大切ですが、折り返し部分は狭かったり細かかったりするため、専門の棒(ラップスティック)を用いてしっかりと押し付けましょう。
特にフィルムは高価であるため、折り返し部分をケチってしまう人もいますが余裕をもって貼り付け、さらに余った端切れは綺麗に切り取っておく必要もあります。端切れから捲れ上がってしまうことも多いからです。
そして、次に多い状況は外装とフィルムの間に空気が入り込むことで表面に凹凸ができてしまいます。自動車を走行させているとき、その凹凸部分に風の抵抗がかかることで亀裂が生じてしまいそこから剥がれたり錆が発生することもあるからです。ラッピングは圧着させることで張り付きますが、そのときスキージー(ヘラ)やローラーで貼り付けるようにすると失敗が減ります。
その他にも、フィルムを切り取るときにカッターナイフを用いることが多く、そのナイフでフィルムを傷つけてしまう危険性があるので気を付けなくてはいけません。フィルムそのものは丈夫なので、多少の切り傷はほとんど目立つことはありませんが、小さな凹凸が生まれます。その凹凸が先ほど述べた通り、運転中の空気抵抗を生じさせてしまうため亀裂が生じやすくなってしまうのです。
また、初心者に忘れがちな作業が脱脂で、これは外装についた脂分を取り除く作業となり、いわゆる洗車となります。その脂分があると外装とフィルムの間に圧着が弱まってしまいますし、ゴミなどが挟まっていると凹凸が生まれてしまうため大切な工程となります。
さらに、洗車しているときに外装に錆がないかもチェックしておいた方がいいでしょう。錆があるままラッピングしてしまうと、その錆が目に見えないまま進行してしまいフィルムを傷つけたり凹凸が生まれる原因となってしまうからです。
このように、家庭でラッピング作業をするときは脱脂・ゴミ・凹凸などに気を付けながらおこなうことでラッピングフィルムの劣化を防止することができます。一見上手にラッピングできたと思っても、利用し続けていくと劣化の速度に差が生まれてしまいます。
退色・変色を防ぐためには紫外線に注意
カーラッピングの専門業者は熟練したプロがおこなうため、上記の失敗をする危険性はほとんどありません。しかし、いくら完璧に仕上げていてもその保管をきちんとしてなければ劣化の原因となってしまうので気を付ける必要があります。
特に、色が褪せていたり変色させてしまう現象は保管によって大きく左右されることになります。当初イメージ通りのラッピングであっても使い続けていくうちに退色・変色が起こってしまい、見た目の印象を損なってしまう危険性があるのです。
せっかく、高いお金を投じてラッピングしたのですから、少しでも長く見た目を楽しみたいと思うのが一般的な心情でしょう。その退色・変色の原因となっているのが太陽光に含まれている紫外線です。
フィルムに使われている色素は、そこに配合されている分子同士が水素結合と呼ばれる弱い力でお互いが繋ぎ合わさっており、その全体の大きさで特定の色を出しています。しかし、紫外線はその水素結合の部分を切り離してしまう作用があるため、それぞれの分子がバラバラになって本来の色合いが失われて退色・変色してしまうのです。
その変化はすぐに現れることはありませんが少しずつ変化していき、その変化の割合は紫外線量で決まってきます。そのため、基本的に屋外でドライブするとき以外は、なるべく太陽光が当たらない屋内に駐車するように心がけるとラッピングフィルムの色合いを長く持続させることができます。
もしも、駐車場が屋外にしかない人、金銭的に余裕がある人は、ラッピングするフィルムを紫外線カット仕様のものを選択すると良いでしょう。紫外線カットフィルムは、表面上に紫外線がフィルムに透過しない特殊な加工がしているため、屋外に駐車し続けていても紫外線による退色・変色の進行を遅らせてくれます。
ただ、このフィルムは一般的なものよりも値段が高価であるので、選択肢の一つとして考えておくと良いでしょう。また、紫外線カットフィルム以外にも、一般的なフィルムでラッピングした後に紫外線カットのカーワックスを塗布する方法もあります。こちらは定期的にワックスする必要がありますが、特殊フィルムを利用するよりは安上がりとなるのでおすすめです。
小さな傷や高温などにも注意が必要
それ以外の使用上の注意点としては、いろいろな点で気を付けるようにしなくてはなりません。先に述べましたが、フィルムに目に見えない小さな傷ができても、そこに凹凸が生まれてしまうため、そこから劣化してしまう危険性があります。
自動車を利用している人のなかには駐車場に隣接している庭先の葉っぱや枝が自動車に触れても、ほとんど目立つ傷ができないからとそのまま放置していることがあります。でも、目に見えないだけで傷がついているわけで、そこからフィルムが破損して亀裂の原因に発展することもあるので、葉っぱや枝が触れるようなら剪定するのがおすすめです。
また同じ理屈で、洗車でも少なからずフィルムに小さな傷をつけてしまう危険性があるため、洗車の頻度は月に1度くらいでも十分だと言われています。
そして、カーラッピングはフィルムを圧着させているだけなので、洗車をするとき強く擦り過ぎないことも心がけなくてはいけません。余程の力でゴシゴシと洗わない限りは大丈夫ですが、あまりにも強く擦ると圧着した部分がズレてしまい全体に歪みを生じさせてしまうことがあるからです。
他にも火器にも気を付ける必要があります。ラッピング工程でヒートガンで300℃近い温風を当てつけることもあるので基本的に直火でも燃えることはありませんが、長時間数百℃のものを当て続けると変色の原因になる場合があります。
このように、カーラッピングが劣化しやすい原因とその対処方法を、主に自動車所有者自らがラッピング作業をしたとき、所有者が保存・利用するときの2つに分けて紹介させていただきました。いろんな状況による劣化を紹介してきましたが、その原因は大きく分けると、『亀裂』『表面上の凹凸』『紫外線』の3つに分けることができるでしょう。
上記で挙げたものはあくまで一部の事例であるため、それ以外の状況で劣化を招く可能性もあります。そのため、この3つの原因をきちんと理解して、その都度の状況で善し悪しを自動車所有者自らが判断していくことが何よりも大切となります。